2020年3月21日土曜日

ばるぼら

手塚漫画の中で最も好きなものを1つ挙げろと言われたら,一瞬の迷いもなく「ばるぼら」と即答できるくらい,「ばるぼら」が好きです.というか,手塚漫画に限らず,あらゆる創作物のなかでもトップクラスに好きです.

で,それが映画化されたということを,ついさっき知ったわけです.

意外に思われるかもしれませんが,美倉センセを稲垣吾郎氏が演じるというのは悪くない配役だなと思ったのですが,予告編を見る限りだと,バルボラ役が…….そもそも,日本人なの?という.

手塚眞氏は,まぁ,親の七光以外のなにものでもない三流〜二流の映像作家なので,演出面は何の期待もしていないのですが(「白痴」は結構頑張っていたと思うけれど),'90 年代香港映画(日本映画を抜き去った頃)を特徴付ける,あの雑然とした雰囲気を色(淡い青味,赤味を行き来する感じ)をコントロールして鮮烈な印象を持った映像に切り取るという技術で一世を風靡したドイルの撮影という点は期待が持たれる.

※有名どころは「恋する惑星」「ブエノスアイレス」あたり.とんと映画から離れているので,最近のはあまり見ていない.

2020年3月20日金曜日

ワニ2

もう1個.

「死」を表現するうえで,主人公(または主人公の大切な人)が病気などで衰弱していくというのは,王道のフォーマットで,まぁ,よくあるストーリー.

でも,実際には「突然の死」が,世の中には多くて,それを表現する試みもあるが,大抵の場合は,主人公の大切な人が突然死をすることで,主人公がなにかを改心していくというストーリーが多い気がする(例「タッチ」).

そんな物語の作り方のロジックでいうと,漫画内の主人公が「突然死」することで,読者を従来の「タッチ」型ストーリーの疎外されたメタの主人公に仕立てる,というのが,ひとつの発明だと思った.ワニは漫画の主人公であるとともに,読者の親しむキャラで,それの死を見ることが,読者に感情を催させる,という作り方.

ワニ

割と早い段階(2, 3 日目くらい)にリツイートされてきたのをみて,毎日ではないけれど,ポツポツみていた.1日に1日進んでいくスタイルだから楽しめるものでもあると思うので,割と運のいい時期に知ったと思うし,だからこそ,まぁ,楽しめた.

作品自体は「100日後に死ぬ」と「あと◯日」という言葉で括ることで微妙なニュアンスを伝えたり.読者の感情をぶよんとした不安に陥れたりできる,という発明がすごいもので,それがリアルタイムでカウントダウンされるということがすべてなので,途中の日常や最後にある死は(言ってしまえば)タイトル通り以外の何物でもなく,ドラマティックである必要もない.まぁ,普通の突発的な事故死というのが普通であり,だからこそ残酷だったのだろう.

で,まぁ,本題はここではない.

50 日辺りから,急にツイッター外に有名になり,80〜90 日くらいで一般のメディアにも取り上げられるようになり,今日は,あらゆるメディアが「死」の瞬間を待っていたかのようだった.

まぁ,はっきり言ってバカが増えていた.

作者の正確な意図など誰もわからないが,少なくとも,冒頭に書いたように「死は誰にも知られず突然」なのに読者は死ぬことを知っているので不穏な空気を感じ,リアルな時間と同期させることで何とも言えない感情が滲み出る,というのが重要な要素であって,その他は末節だろうと思う(ある日常がある日終わる以外のことはどうでもいい).

最後の10〜20 日くらいは,明らかにこの楽しみ方ができる限界の人数の想定のキャパを超えていたように思う.「死に方」の考察なんかをしている層,斜に構えて「この程度のもの」みたいな見方をすると格好いいと思っているバカ,穿った意見を言っているつもりで見当はずれのバカ,ワニ可哀想勢などなど……,作品をテクストとして楽しめない外野にまで作品が広がったことが,なんか,「これでいいの?」と思った.いや,まぁ,作者は金が儲かるからいいのか.

あと,作者は単行本を出すみたいだからリアルタイム性は捨ててもいいと思っているのかもしれない……が,最初の数日を除いてリアルタイムで読んでいた身としては,リアルタイムだから感じたぶよんとした気持ち悪さは,作品の捨てがたい要素だったと思うよ.(というか,それを意図してなきゃ,そもそも,こういう配信形態にしないはずだから,作者も,それはそれで意図していると思う)