2016年5月12日木曜日

絶対ないとは言わないけどさ

とある中学生くらいの少年が,奇抜な発想で,しかも,Google Earth を使ってマヤの遺跡を発見したというニュースが全世界を駆け回ったかと思ったら,一瞬で学識者からマジレスを食らって消え失せたという話.

今回のニュースの場合,一報を聞いた時点でリモートセンシングを使って遺跡を探すという学術分野があることを知っていたので(私はリモセンに近しい分野の人なので),瞬時にガセネタ(または少年の錯誤)と判断できましたが,まぁ,騙される人は多かったようで(ニュースの影響力って偉大ね),いつものお決まりの「学者はバカか?」とか「金返せ!」のシュプレッヒコールを方々で見かけました.まぁ,それはどうでもいいんだけれど.

この件で,僕がひとつだけ言いたいのは,数十年前ならいざ知らず,基本的に,どんな分野でも素人が急に最先端の学問領域に新しい風とともに切り込んでくるなんてことはないですよ,ということ.

普通に生きている人には想像もつかないくらい頭のいい人(たぶん,大多数の人は生まれてから死ぬまで一度も会うことがないレベルの人たち.仮に会っていたとしても,その頭の良さを認識できないようなレベルの人たち)が集まって,特定の狭い分野の研究に色々な手法をもって取り組んでいるのが研究の世界です.よく,「素人の柔軟な発想が〜」みたいな言われ方をするけれど,その瞬間までどの学問分野にも属さずに素人でいられる程度の脳みその人に学者より柔軟な発想ができるとは到底思えません.

子供が頑張ったんだから,否定するなみたいな言説も見かけたけれど,研究の世界は,批判や論争を乗り越えてこそ,新たな地平に向かえるものなので,かの少年が,(今回の失敗にめげずに)その熱意を燃やしてくれることを願うからこそ,マジレスが彼には必要だと,僕は思います.

そもそも,この少年の説が世界中に晒されるより前に,この少年の錯誤に気付いている大人はいたはずで,この少年を甘やかして学術的批判を加えなかったことが今回の事態を招いているのは明らかなので,否定されるべきは少年の説への学術的批判を非難する人たちの方だ(そもそも,二年くらい前からの話みたいなので).

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