2014年6月19日木曜日

アウトリーチ

水の入った盆をひっくり返すようなことを言わせてもらうなら,ある分野の発展や拡大を目指すアウトリーチは心の底から無駄だと思う.

断言するが,子供が体験を通して特定の分野に興味を持つことなんて,ほぼありえない.たいていの子供は,高校に入るまで理系か文系かすら決めないし,専攻というレベルの細かい分類の選択なんて,大学に入るまでしないものだ.だから,アウトリーチは分野の発展(=分野の関係者の増加)には,ほとんど寄与しない.大人相手のアウトリーチなんて,その大人が一角の学者(=分野の発展への寄与)になる可能性を考えたら,完全に無意味だ.アウトリーチとは,アウトリーチによってアウトリーチ好き層を増やす自己増殖のまやかしだ.

一方,観光とリンクした形でジオパークみたいなものを使うというのは,比較的妙案だと思う(僕の専門の問題で,地質を例にとってしまうのは申し訳ないが).学術に触れる体験をしたいとか,余暇に知的な活動をしたということを誇りたいとか,そういう自己満足を得たい層は確実に存在しているので,そこから金を搾り取って,それを分野に還元すれば,ある程度は意味のある活動になると思う.

アウトリーチは,金儲けのために尖鋭化するか,単純に,(義務)教育の改革を志向する政治に転化されるべきだ.

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